【介護施設の入浴はどうなっている?】:ただ清潔にするだけでなく、心と体を元気にする入浴ケア
- rehabiliport2019
- 4月30日
- 読了時間: 7分
介護施設での「入浴」。それは、単に身体の汚れを落とすためだけではありません。利用者の方々の心身の健康を保ち、毎日の生活の質(QOL)を高める上で、非常に重要な役割を担っています。
今回は、介護施設における入浴ケアがなぜ大切なのか、どのような工夫がされているのか、詳しくご紹介します。施設選びの際の参考にもなれば幸いです。

1. 入浴がもたらす嬉しい効果:心と身体へのメリット
介護施設での入浴には、主に4つの大切な目的があります。
① 皮膚トラブルを防ぎ、清潔を保つ
高齢になると皮膚は乾燥しやすく、外部からの刺激に弱くなりがちです。入浴によって汗や垢、排泄物などをきちんと洗い流すことは、床ずれ(褥瘡)や湿疹、水虫などの皮膚トラブルを防ぐために不可欠です。清潔は、感染症予防の基本でもあります。
② 心をリラックスさせ、穏やかな気持ちに
温かいお湯に浸かると、心身をリラックスさせる副交感神経が優位になります。これにより、不安や緊張が和らぎ、穏やかな気持ちになれます。特に認知症の方にとっては、夕方になるとそわそわしたり、落ち着かなくなったりする「夕暮れ症候群」の緩和策として、入浴の時間を調整することもあります。
③ 血行を促し、体の動きをサポート
入浴の温かいお湯は血行を良くし、筋肉の緊張をほぐします。また、関節の動きも滑らかになるため、身体の動かしやすさを維持する助けになります。
④ 生活リズムを整え、質の高い睡眠へ
「日中に活動し、夜に眠る」という規則正しい生活リズムは、健康の基本です。定期的な入浴は、このリズムを作るきっかけとなり、心地よい疲労感から夜間の良質な睡眠へとつながることが期待されます。
2. 入浴の頻度とスケジュール:一人ひとりに合わせて
頻度: 原則として週に2回の入浴機会を設けている施設が一般的です。
スケジュール:
個別対応が基本: 多くの場合、曜日や時間帯で男女を分けたり、午前中に入浴したりすることが多いですが、画一的ではありません。利用者一人ひとりの希望、排泄のタイミング、服薬時間などを考慮し、個別の入浴カレンダーを作成することがあります。
柔軟な対応力: その日の体調が悪かったり、本人が入浴を希望されなかったりする場合もあります。そのような時は無理強いせず、「体を拭くだけ(清拭)」「手や足だけお湯につける(部分浴)」「髪だけ洗う(洗髪)」など、状況に応じた柔軟な対応をとります。
3. 入浴のお手伝い(介助):状態に合わせた3つのスタイル
利用者の方の身体の状態に合わせて、必要なサポートを提供します。大きく分けて3つの段階があります。
支援レベル | 内容 | 対象者の例 |
見守り | 基本的にはご自身で。転倒など危険がないか見守り、声かけ中心。 | 要支援の方、比較的お元気な要介護1の方など |
部分介助 | 服の着脱、浴室内の移動、背中洗いなど、難しい部分をお手伝い。 | 立ち座りに少し不安がある方など |
全介助 | 服の着脱から洗体、浴槽への出入りまで、すべてをサポート。 | 寝たきりの方、認知症が重度の方など |
※多くの施設では、利用者の方の羞恥心に配慮し、可能な限り同性のスタッフが介助を行う「同性介助」を原則としています。
4. お風呂の種類:安全・快適に入浴できる設備
様々な身体状況に対応できるよう、介護施設にはいくつかのお風呂の種類があります。
一般浴槽: ご家庭のお風呂に近いタイプです。手すりや滑り止めマットが設置され、安全に配慮されています。比較的お元気な方が、ご自身のペースでゆっくり入浴するのに適しています。
個浴(個別浴室): 一人ずつ入るタイプのお風呂です。プライバシーが守られやすく、人目を気にせず落ち着いて入浴したい方、認知症の影響で集団での入浴が難しい方などに適しています。スタッフが1対1で丁寧に対応できるメリットもあります。
機械浴: 寝たきりの方や、座った姿勢を保つのが難しい方でも安全に入浴できるよう、特別な機械を用いたお風呂です。介護スタッフの身体的な負担軽減にもつながります。
チェア浴: 専用の椅子に座ったまま、椅子ごと浴槽に入るタイプ。座ることができる方(要介護2~3程度)が対象です。
リフト浴: クレーンのようなリフトで体を吊り上げ、浴槽まで移動するタイプ。麻痺がある方や足の筋力が著しく低下している方(要介護3~4程度)が対象です。
ストレッチャー浴: 専用の寝台(ストレッチャー)に寝たまま、浴槽に入れるタイプ。寝たきりの方、医療的なケアが必要な方(要介護5程度)も、負担なく入浴できます。
5. 安全と衛生管理:安心して入浴するために
安全で衛生的な入浴を提供するために、施設では様々な対策を行っています。
入浴前の健康チェック: 入浴前に血圧・体温・脈拍・血中酸素飽和度(SPO2)などを測定(バイタルチェック)し、体調に問題がないか確認することが一般的です。体調がすぐれない場合は、無理せず入浴を延期したり、医師の指示を仰いだりします。
浴室の安全設計: 床は滑りにくい素材を使用し、浴槽の周りや移動する場所には手すりが設置されています。万が一に備え、緊急呼び出しボタンや転倒センサーなどが設置されている施設もあります。
感染症対策の徹底:
浴槽や椅子、桶などの用具は、利用するごとに消毒します。
タオルやバスマットは、利用者ごとに分け、清潔なものを使用します。
介助を行うスタッフは、マスク、手袋、エプロンを着用し、衛生管理を徹底します。
6. 機械浴のメリットと導入時のポイント
機械浴は、利用者とスタッフ双方にメリットがあります。
利用者にとってのメリット:
抱え上げられたり、無理な姿勢をとったりする必要がなく、痛みや不安を感じにくい。
床ずれなど皮膚にトラブルがあっても、負担を少なくして清潔を保てる。
プライバシーに配慮した設計のものが多い。
スタッフにとってのメリット:
利用者を抱え上げる際の腰への負担が減り、腰痛予防になる。
介助が効率化され、利用者一人ひとりと向き合う時間を確保しやすくなる。
【機械浴導入時に施設が考慮する点】
スペース: 設置にはある程度の広さが必要です。
利用者の状態: どのタイプの機械浴が、利用者の身体状況(座位が保てるか、寝たきりかなど)や持病(心臓疾患など)に適しているか。
費用とメンテナンス: 導入にはまとまった費用がかかるほか、定期的なメンテナンスも必要です。
7. 施設選びのチェックポイント:家族や本人が確認したいこと
施設を選ぶ際には、入浴に関して以下の点を確認しておくと良いでしょう。
チェック項目 | 確認のポイント |
緊急時の対応体制 | 体調が急変した場合、看護師は常駐しているか?夜間でも対応可能か? |
入浴拒否への対応方法 | 入浴を嫌がった場合、どのように対応してくれるか?(説得?代替案?) |
皮膚疾患へのケア | 皮膚が弱い、特定の皮膚疾患がある場合、塗り薬の使用など個別対応は可能か? |

まとめ:入浴は「快適・安全・尊厳」を守る大切なケア
介護施設における入浴は、単なる清潔保持にとどまらず、利用者の心身の健康、そしてその人らしい生活を支えるための重要なケアです。
施設によって、設備やケアの方法は様々です。施設を選ぶ際には、「どのような入浴支援が行われているか」「入居を検討している本人に合ったサポートが受けられそうか」をパンフレットだけでなく、実際に施設を見学して確認することをお勧めします。
利用者の方が、安全で快適に、そして尊厳をもって入浴を楽しめること。それが、質の高い介護サービスにつながると言えるでしょう。
いかがでしたか?少しでも介護施設の入浴事情について参考になれば幸いです。
私たち「あんしんホーム」では、施設の見学同行や内覧を通じて、施設内の設備についても多くの情報を持っています。施設探しにお悩みがありましたら、ぜひお気軽にご質問・ご相談ください。
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